駐犬ポール~ゲーム別館

現在進行形で刀剣乱舞にハマリ中

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

決戦はカレー曜日

 今日の夕食はカレー。

 その一報がもたらされた途端、本丸はどよめいた。多くの顔は引きつっていた。

「カレーって、やっぱり作るのは主様ですよね?」
 既に半泣きの五虎退に、素早くエプロンを持って燭台切光忠が立ち上がる。
「何か他に食べられるものを用意しておいた方がいいね」
「いやー、もう間に合わないわ。あいつ既に厨に行っちゃったし。今大和守安定が米研ぎながら、とりあえず牛乳なりなんなり、緩和剤をぶち込む隙を狙ってる」
「今行くと余計に刺激する、か。沖田譲りの冴えた一撃が頼みの綱かよ。少々命綱としては細くねぇか?」
「うーん、でも他に方策はないよ?」
 うーん、と更に数人が頭を抱える。

 審神者カレー。それは恐怖の象徴であった。一部の味に頓着のない武辺者を除いて、誰もが忌避する呪われたメニュー。
 かなり料理自体はうまい。特に肉じゃががうまいと評価の高い審神者のレパートリーにおいて、このカレーだけが恐ろしく不評である。
 理由は極シンプルで、凝っている点だけは評価しても、評価自体が恐ろしくマイナスに喰い込むほどの激辛であるからだった。
『藤四郎達が食べられないかもしれないから、ちょっと甘口にしてやろうかな』などという思いやりはここでは一寸たりとも発揮されない。彼の中での曲げられぬ信念と化した、完成されたレシピであるらしかった。
 やがて、恐れていた声が高らかに響き渡る。
「お待たせー!夕飯できたぞ!今日は俺特製カレーだ。肉もたーんと入ってるぜー!」
 全員の顔に漂う悲壮感。そして、鍋を持った一人だけが笑顔だった。

 辛い。
 既に食卓周辺の空気すら辛い。唐辛子の成分が漂っているのか、涙を流しているものもいた。
 お約束で全員手をあわせ、いただきますと唱和した後も、本当にスプーンを口にしたのは極少数だった。
「やれやれ、今日の食事は雅じゃないねえ。僕は月見をしながら湯漬けでも食べるとするよ」
「逃げんな、文系」
 涼しい顔でさりげなく立ち去ろうとした歌仙兼定の襟首を、審神者がむんずと掴んで力任せに引き止める。沈鬱な表情で歌仙兼定は再び着座した。
「君、意外に力があるよねえ。戦場に出られるんじゃないのかい」
「俺はその気になれば岩融だってお姫様抱っこできる。本気出さないだけだ。
 長谷部はカレー食べるよな!」
「主命とあらば」
「……待て、お前主命じゃないと俺のカレーが食えないっていうのかよ」
「いえ、主の作ったものでしたら、この長谷部、例えカレーであろうとも!ただ、少々心の準備が」
「わかった。あーんしろ。俺が食べさせてやるから食え」
「あ、あーん……ぐふっ」
 長谷部はスプーンを口に入れた瞬間、鼻血を吹きながら激辛カレーに轟沈した。主命と言われるとなんであろうとこなそうとする不幸体質に、本丸中の哀れみの視線が降り注ぐ。
「大丈夫かい長谷部くん、ほら、これを飲むといいよ」
 倒れ伏した長谷部に、フリルエプロンの燭台切光忠がすかさずマンゴーラッシーを差し出した。おおお!と今までとは種類の違うどよめきが沸き起こる。
 一筋の希望。それはまろやかな黄金色のマンゴーラッシー。
「ヤバイ、光忠が仏に見える!」
「むしろ主が魔王に見える」
「魔王の刻印が……主にも刻まれていようとは……」
 芳醇な南国の果実の風味と砂糖の甘さ、そしてヨーグルトの醸し出す舌に優しい冷たいドリンクこそが、凶悪カレーに立ち向かう彼らにもたらされた一振の武器となった。
 後光が射さんばかりの燭台切光忠に比して、この時ばかりは審神者は本丸中の敵となっていた。
「はーっはっはっは!これは飯が進むなあ!」
「まさに刺激的ってやつだ。俺っちはそんなに嫌いじゃないぜ」
「とりあえず食える」
「頭の天辺から汗がにじみ出る感じがたまらんな!これも修行のうちよ!」
 ひと匙のルーで皿に山盛りの白米を無造作にかき込む味音痴と辛党達は、騒動を尻目に平和な夕食を遂行している。
 世はまさに混沌。怯える者有り、怒るもの有り。けれどこの空間においてある種の超越者である審神者に対しては、面と向かって猛烈な不満を表せる者はいなかった。
 その瞬間までは。

「あーっ!もう限界だ!」
 苛立ちを顕にやおら抜刀して石切丸が立ち上がった。切っ先はまっすぐに審神者に向かっている。
「私は食べられない。このカレーとやらを無理に食べる必要も感じない。というより、これを皆が本当に完食したら、ここにいる全員の胃痛を治すために私は何日祈祷すればいいのやら!」
 抑えた口調とは裏腹に、表情は硬い。突如向けられた刃に、審神者一人が呆気にとられていた。
「俺の特製絶品カレーが食べられない?」
「食べられない!」
「なんで?」
余りにナチュラルに返ってきた疑問に、次は石切丸の方が呆気にとられる番だった。思わず切っ先も下がる。
「なんでって……辛すぎるからだよ」
「ええっ、これ辛すぎるの!?」
「まさか、今まで気づいてなかったのか!」
「気づいてなかっただと!?お前ちょっとは空気読めよ!オラオラオラ!!」
厨で一人、事態を阻止しようと孤独な戦いに身を投じていた大和守安定は、これまでにないほど本気でブチ切れていた。守勢が攻勢に転じ、鬼の形相で審神者に馬乗りになって襟首を締め上げる。
「首落として死ね!」
「ちょっ、待て待て!殺したらやばいだろ!」
「兼さん、そいつ本気で止めて!死ぬ気で!」
 さながら乱闘の様相を呈した食卓が落ち着くまでに、しばらくの時間を要したのは言うまでもない。

「ほんとーに、すいませんでした」
最終的に、全員の前で土下座で謝罪をさせられる羽目になった審神者である。抜き身を構えたままの大和守安定と石切丸が両脇に立っている。
「本気で謝れ。特に長谷部に」
「長谷部はあーんで沈んだんだからいいんじゃないの?」
「いいわけない」
取り付く島もない山姥切国広の一言に、しおしおと頭を垂らす。
「長谷部、ごめんな。あーんするならお前喜ぶかと思って」
「……主がそう思ってくれるなら、この長谷部、それ以上の喜びはありません」
 審神者に手を取られ、膝枕されたへし切り長谷部は、それだけ呟くと再び意識を失った。
「幸せそうな顔してるな」
「変態だ」
「長谷部くんとは気が合いそうだと思ってたけど、僕もちょっとここまでは理解できないよ」

 後に『カレーの変』もしくは『石切丸と安定ブチ切れ事件』と呼ばれた夜の話であった。
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

ご案内

プロフィール

相原やよい

Author:相原やよい
数年間放置してた別館を復活。SS置き場。

最新記事

コピーライト

仮想世界シミュレーションゲーム「ワールド・ネバーランド ~ナルル王国物語~」オフィシャルサイト
当ページでは株式会社アルティが権利を持つ『ワールド・ネバーランド~ナルル王国物語~』の画像を利用しております。該当画像の転載・配布は禁止いたします。
(C)althi Inc. http://www.althi.co.jp/

右サイドメニュー

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。