駐犬ポール~ゲーム別館

現在進行形で刀剣乱舞にハマリ中

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手紙

 彼の手には、とうにくたくたになった手紙が握られていた。
 何度も何度も、書き手の声で脳裏に蘇るほど読み返した文だ。
 様々なものが電子化されても、手書きを愛して紙で手紙を書く人間は後を絶たない。この手紙の送り主もまた、そういう類の人間だった。

「あ、また手紙見てる」
大和守安定と加州清光が審神者に気づいて足を止めたのは、日当たりの良い本丸の縁側だった。彼らの主君は、よくここにいる。
「おっ、おかえり。お疲れ様。怪我とかしてないか」
「遠征ごときで怪我なんてしないよ」
「あー、でも腹減ったなー!今日の飯当番誰だっけ」
「今日の飯当番は、えーと、人増えたから複雑になったよな……っと、あ、お前らだわ」
「うわっ、マジそれ?これから米炊くのか」
 がっくりと肩を落とす加州清光に並んで、思わず大和守安定もため息をついた。
「何升炊けばいいんだっけ?なんだか、屯所を思い出すよ……」
「いや待て君達!今日は俺がメシを作って進ぜよう!お前らは米だけ炊くがよい!」
 やおら立ち上がった審神者に、おおっ!という声がふたり揃った。
「やった!俺お前の作る肉じゃがとか結構好きだよ」
「でも、どんな風の吹き回しで?」
 尋ねる大和守安定に、審神者は手紙を差し出した。
「これ見てたら、そういう気分になった」
「見ていいのかい?」
「いいぞ。別に極秘事項が書いてあるわけじゃないから」
 あっさりと渡された手紙を開くと、隣の加州清光も覗き込んでくる。文面に目をやると、意外にも短い言葉で綴られたものだった。

『元気にしてますか?ちゃんとご飯食べてる?
人参と長ネギが嫌いだからといって、わざと避けないように。
あと、下着は面倒がらずにちゃんと毎日替えなさい。

追伸、酒は飲んでも飲まれるな』

端的すぎる文面から、手紙の主がどういう存在なのかは二人にも簡単に想像がついた。
「……お母さんから?」
「いや、親戚の……まあ、姉さんみたいなもんだ。よく世話も焼かれた」
「へえ、そういや、沖田も時々手紙読んでたな」
「ああ、沖田総司も姉さんいたんだよな。なんていうかさ、料理が好きで、俺がたくさん食べると嬉しそうに見てた人だったよ。人に食べさせるのってそんなに嬉しいのかと、俺は子供心に思ったね」
「随分大事にいつも見てるから、どんなことが書いてあるのか気にはなってたよ。至言といえば至言だけど、ちょっと驚いたな。
 最近は手紙来ないの?」
 他意のない大和守安定の一言に、手紙を受け取る審神者の手が一瞬とまった。
「あー、うん。……もう、手紙来ないんだ。死んじゃったから」
「……ごめん」
「お前が謝ることじゃないよ。まさか死ぬような人だと俺も思ってなかったしな。
 それでー、なんか俺も久々に手料理をガッツリ振舞ってお前らの喜ぶ顔を見たいと、そういう心情に至ったわけで!以上、説明終わり!」
 わざと声のトーンを上げて、明るく振舞う審神者の様子は、逆に痛々しいものに見えた。そういえば、沖田も病に倒れてから殊更に明るく振舞うことがあったと、期せずして二人は同時に思い出していた。
「よーし、じゃあ俺張り切って米研いじゃうぜー!今晩何作る?」
「今晩は、カレーだ!」
「えっ、カレー!?」
「マジで?肉じゃがにしてよー」
「食べたい日それがカレー曜日!俺が本丸の法律です!よって今日はカレー」
 審神者は手紙をポケットにしまうと、加州清光と大和守安定の肩に手を回して歩き始めた。
 賑やかな声が縁側から遠ざかる。
 小鳥が一羽、一瞬首をかしげると、飛び立っていった。
 何かを見届けて、安心したかのように。

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