駐犬ポール~ゲーム別館

現在進行形で刀剣乱舞にハマリ中

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鬼を斬る者

「よお、山姥」
 本丸の縁側を山姥切国広が歩こうとしたところで、そう声をかけられた。
それで初めて、縁側に大の字に伸びた審神者に気づき、眉をひそめた。
「その呼び方、なんとかならないのか」
 控えめに、極控えめに文句を言ってみる。このどこかとらえどころのない主は、言っても聞いてくれない気はするが。
「じゃあなんだ、国広って呼ぶか?考えてみろお前、呼んだ途端に堀川と拙僧とお前が一斉に振り返るんだぞ。そもそも国広って刀匠の名前だろう」
「……山姥切と呼べばいいだろう」
「お前が写し写しって言うから、そう呼ばないでいるんだけどなあ」
 いよっと声を上げて、審神者が身を起こす。首を回したり、腕を回したりしている所を見ると、相当長い時間板間で寝ていたようだった。
「それで、俺に何の用だ」
「ああ、お前に次の隊長任すから、出陣してくれ」
「それだけか」
「あと、茶か何か持ってきてくれ。喉が渇いた」
 ふぅ、と思わず溜息が出る。何を言っているんだこいつは、と呆れるしかない。刀に何をさせるつもりだ。俺たちは都合のいい、命じられたことは何でもするような家来じゃない、と。
山姥切国広が嫌がっている空気を察したか、審神者は顔を上げて彼の顔を覗き込んできた。
「悪い。ちょっと疲れてたもんでさ。この場を維持するだけでも、結構霊力食うんだぜ。今日色々あったから、山姥切ちゃんにちょーっと甘えてみたくなっただけです。なんちってー」
「……気色悪い」
 眉をひそめてそう呟いては見たものの、山姥切国広はそれがあながち嘘ではないことに気づいていた。
 確かに彼は、珍しく憔悴しているようだった。こちらにそれと分からせるほどに。
 一番付き合いの長い身として、それくらいはわかるようになった。

縁側に並んで腰を下ろすと、審神者が手に何かを握り締めているのがわかった。紙の束。どうやら手紙らしい。
「お前、歴史改変論者どものことをどう思う?」
 突然そう話を振られて、咄嗟には言葉が出ない。そういえば、敵の何たるかについてあまり考えたことはない気がする。
 山姥切が答え倦ねているのを察して、審神者が言葉を絞り出した。
「あいつらのやることだけは、俺は絶対許さない。何が何でも止める」
珍しく語調が強い。微かな驚きを覚えて、山姥切は彼の主を振り向いた。妙に静かな目がそこにある。
「過去は変えていいもんじゃない。変えても現在や未来がよくなるとは俺は思ってない。所詮、この世なんていい事も悪いことも同じだけあるのさ。受け止める側の問題で増えたり減ったりするだけで。
誰かが死ぬ原因を消せば、他の誰かが代わりに死ぬ。そういうようにできてるんだろ、この世ってやつは。
苦しみ悲しみの原因を消しされば、幸せだけが残るのか?んな訳ねえよ。そんな都合のいい話はない!」
 一気に話し、審神者は体を折って咳き込んだ。思わずその背を支えると、しばらくして咳の治まった彼は、微笑んでみせた。
「ああ、やっぱりお前は綺麗だな」
 消え入りそうな声で、妙に澄んだ目で、山姥切を捉えて審神者はそう言った。綺麗と言われ、思わず顔を背ける。
「俺は、写しと言われる次に綺麗と言われるのが嫌いだ。知ってるだろう」
「知ってる。一番長く一緒にいるんだ。それくらいよく知ってるさ。
 俺もお前みたいにわかりやすく拗ねられればよかったよ」
「なんだそれは」
 審神者が微笑む。
 綺麗だ、とぼんやりと思う。この主こそ、綺麗と言われてもおかしくない。
「……最初にお前を選んだのは、俺に似てると思ったからかもな。
 写しのはずだったのに、そこに力が宿っちまったから、ずっと比較される。劣っていれば、却ってよかったのかもしれないのに。
 でも、俺は俺だ。俺は審神者だ。神意を読み取る者。降り宿りし神の何たるかを見極める者。宿りし神が邪なる者なら、それを払うのも俺の役目。
 もしも、お前らが怨念に飲み込まれて禍つ神になった時には、俺が始末をつけなきゃいけない」
 そこまで一気に告げると、審神者は目を伏せた。
「ただの刀なら良かったのにな。でも、現存しない奴もいるし、想いの欠片でも残っていれば、寄り代があれば宿らせることができる。戦うには、こうしなきゃいけないんだとわかってはいたんだけど、さ」
審神者の目に溜まり始めた涙に気づき、山姥切ははっと息を飲んだ。
「血肉を備えるのがどういうことかって、俺がちゃんとわかってなかったんだ。
 人の姿をして言葉を話したら、情を移すなって無理な話だろ。
 なあ、頼むから俺を鬼にしてくれるなよ。今生きてここにいるお前たちが、これ以上苦しむ様を見たくないんだ。
 俺が神殺しの鬼になって狂っちまったら……」
一度ぽっかりと空いた間に、ざわり、と嫌な予感が背を這っていったような気がした。

「お前が、俺を殺してくれ」

 両肩を、思わぬ力で掴まれる。今まで見たことのないほどの真摯な顔がそこにはあった。なんとか言葉を告げようとするが、うまくいかない。悩んだ挙句、山姥切国広は主の涙を指で拭ってやった。
 そうして、ようやく一言だけ告げる。
「……鬼には、させない」

 傍らに置いていた刀を持って歩き出す。出陣だ。
 全てを狂わす敵を、今は、ただ斬るのみ。


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Author:相原やよい
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