駐犬ポール~ゲーム別館

現在進行形で刀剣乱舞にハマリ中

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流れて消える

SSです。
メルヴィルの親友・ショーン君と、彼のお母さんが亡くなったときのお話です。
二代目アリアが心のそこから愛してたたった一人の人、マルヴィンさんの孫であるショーン君は、マルヴィンさんと生き写し。
そして、何故かアリアの危篤のときにきてました。下の記事参照。

SSは続きをどうぞ。

母が危篤であるという事実を知ったのは、試合の日の朝だった。
俺は少し悩んで、ノームスの隊服に袖を通した。
母もずっと騎士であることに誇りを持っていた人だから。そして、祖父もまた、息を引き取るその瞬間までアクアスの隊服を脱ぐことはなかったと聞いていたから。

生まれ育ったシーラルの家に着いたのは、夕方も遅くになったころだった。
母の子供は俺一人だし、父はとうに他界してる。誰かがいるなんて思ってもいなかった。

「カタリーナさん、ほら、ポワンの花ですよ。僕、試合によく持っていたよね。覚えてる?」
母の傍らにひざをつき、床一面に撒かれた花から一輪を取り出して、メルヴィルが母の前にかざした。もう、殆ど見えていないだろう目の前に。
「ええ・・・ええ、覚えてるわ。メルヴィル君、国中の女性にお花配ってたんだもの。試合の特にいつもお花くれたわね。覚えてる・・・懐かしいわ」
ひとつ年上の親友は、俺の姿に気づくと会釈して、今度はまた別の花を母に見せている。
老女は、幼女に還るのだろうか。無垢な目で花を見つめる母は、いっそあどけないとも言える表情をしていた。
「ショーンもきてくれたのね。ありがとう。・・・これで思い残すことはないわ。お父さんのところへ。やっといける・・・」
母は深く息をついた。
そして、穏やかな息で目を閉じ、そのままその目が開くことは二度となかった。

誰もいなくなった空の家から、メルヴィルと二人並んで歩いた。
「今日、ずっと母のところにいてくれたのか」
君は優しくて、いい奴だ。ひとつ年上の親友に対するこの評価は、なんだか恥ずかしくて口に出したことがない。そんな俺の問いかけに、メルヴィルは答えになっていない返答を返してくる。
「君、今日試合だっただろう。応援に行けなくてごめんな」
「・・・そんなこと・・・」
そんなこと、どうでもいいよ。メルヴィルに感謝こそすれ、謝られるようなことは何一つない。危篤の母をひとり残して、血筋に流れている誇りを取るべきか悩んだんだ。代わりをさせてしまった彼に、謝らなくちゃいけないのは俺のほうなのに。

見舞いに行って「試合はどうしたの」って言われるのが怖くて逃げたんだ。

「僕、ショーンの試合楽しみなんだよ。なんだか知らないけど、僕の友達は武術選んだ人間少なすぎてさ」
「それより、母さんのこと優先してくれたのか」
だってさ、そう呟きながら、メルヴィルは上着の前を合わせた。そろそろ夜は風が冷たくなってくる季節だった。
「僕の母のときに、先にしてくれたのは君だよ。母さん喜んでた。ほかの誰でもなくて、ショーンが来たから喜んでた。
僕じゃカタリーナさんの特別にはなれないから、せめてお花だけでもたくさん持って行こうと思って」

二人揃って、言葉が途切れてなんとなく夜空を見上げた。

メルヴィルの母さんは、俺の爺さんと昔なにかあったらしい。
かなわぬ恋だった。お互いに。想いに気づいてお互い求め合っても、どうにもならないことはある。
それで俺は、その爺さんに生き写しだそうだ。
メルヴィルの母さんは、王国の至宝とも呼ばれた凄い人で、王族の末端に生まれた人だった。美人で、若いころは物凄くもてたらしい。子供心に見ても、確かに綺麗な人だと思った。そして何より、優しかった。いつも笑っていた。
笑顔の奥に悲しさが見えることに気づき始めたのは、いつ頃からだろうか。

爺さんが死んだときだろうか。それとも、初めて人を好きになったときだろうか。

王宮前の通りで彼とは別れる。彼は今クラウンハイムに住んでいるから。
「奥さん大事にしなよ。新婚なんだから」
「言われなくても大事にするし、新婚じゃなくなっても大事にするよ!」
そっか、とメルヴィルは笑う。頭ひとつ小さい友を見下ろす格好になった。
「やっぱりショーン君はいい奴だな」
「ああもう、どうしてそう小恥ずかしいことを平気で口にできるんだろう、この殿下は!!」
「ははは、別に僕恥ずかしいことを言ってると思ってないしね。じゃあ、また明日。葬儀にも必ず行くから」
手を振って、彼は小走りにクリートエルグの中に消えていった。
「恥ずかしくないんだ・・・」
そういえば、彼が怒ってるところとか見たことないな。
「メルヴィル、君はいい奴だな・・・」
うっすら白くなった息が夜風にまぎれて消えるのとともに、その独り言も夜空に溶け込んで行った。
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Author:相原やよい
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