駐犬ポール~ゲーム別館

現在進行形で刀剣乱舞にハマリ中

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決戦はカレー曜日

 今日の夕食はカレー。

 その一報がもたらされた途端、本丸はどよめいた。多くの顔は引きつっていた。

「カレーって、やっぱり作るのは主様ですよね?」
 既に半泣きの五虎退に、素早くエプロンを持って燭台切光忠が立ち上がる。
「何か他に食べられるものを用意しておいた方がいいね」
「いやー、もう間に合わないわ。あいつ既に厨に行っちゃったし。今大和守安定が米研ぎながら、とりあえず牛乳なりなんなり、緩和剤をぶち込む隙を狙ってる」
「今行くと余計に刺激する、か。沖田譲りの冴えた一撃が頼みの綱かよ。少々命綱としては細くねぇか?」
「うーん、でも他に方策はないよ?」
 うーん、と更に数人が頭を抱える。

 審神者カレー。それは恐怖の象徴であった。一部の味に頓着のない武辺者を除いて、誰もが忌避する呪われたメニュー。
 かなり料理自体はうまい。特に肉じゃががうまいと評価の高い審神者のレパートリーにおいて、このカレーだけが恐ろしく不評である。
 理由は極シンプルで、凝っている点だけは評価しても、評価自体が恐ろしくマイナスに喰い込むほどの激辛であるからだった。
『藤四郎達が食べられないかもしれないから、ちょっと甘口にしてやろうかな』などという思いやりはここでは一寸たりとも発揮されない。彼の中での曲げられぬ信念と化した、完成されたレシピであるらしかった。
 やがて、恐れていた声が高らかに響き渡る。
「お待たせー!夕飯できたぞ!今日は俺特製カレーだ。肉もたーんと入ってるぜー!」
 全員の顔に漂う悲壮感。そして、鍋を持った一人だけが笑顔だった。

 辛い。
 既に食卓周辺の空気すら辛い。唐辛子の成分が漂っているのか、涙を流しているものもいた。
 お約束で全員手をあわせ、いただきますと唱和した後も、本当にスプーンを口にしたのは極少数だった。
「やれやれ、今日の食事は雅じゃないねえ。僕は月見をしながら湯漬けでも食べるとするよ」
「逃げんな、文系」
 涼しい顔でさりげなく立ち去ろうとした歌仙兼定の襟首を、審神者がむんずと掴んで力任せに引き止める。沈鬱な表情で歌仙兼定は再び着座した。
「君、意外に力があるよねえ。戦場に出られるんじゃないのかい」
「俺はその気になれば岩融だってお姫様抱っこできる。本気出さないだけだ。
 長谷部はカレー食べるよな!」
「主命とあらば」
「……待て、お前主命じゃないと俺のカレーが食えないっていうのかよ」
「いえ、主の作ったものでしたら、この長谷部、例えカレーであろうとも!ただ、少々心の準備が」
「わかった。あーんしろ。俺が食べさせてやるから食え」
「あ、あーん……ぐふっ」
 長谷部はスプーンを口に入れた瞬間、鼻血を吹きながら激辛カレーに轟沈した。主命と言われるとなんであろうとこなそうとする不幸体質に、本丸中の哀れみの視線が降り注ぐ。
「大丈夫かい長谷部くん、ほら、これを飲むといいよ」
 倒れ伏した長谷部に、フリルエプロンの燭台切光忠がすかさずマンゴーラッシーを差し出した。おおお!と今までとは種類の違うどよめきが沸き起こる。
 一筋の希望。それはまろやかな黄金色のマンゴーラッシー。
「ヤバイ、光忠が仏に見える!」
「むしろ主が魔王に見える」
「魔王の刻印が……主にも刻まれていようとは……」
 芳醇な南国の果実の風味と砂糖の甘さ、そしてヨーグルトの醸し出す舌に優しい冷たいドリンクこそが、凶悪カレーに立ち向かう彼らにもたらされた一振の武器となった。
 後光が射さんばかりの燭台切光忠に比して、この時ばかりは審神者は本丸中の敵となっていた。
「はーっはっはっは!これは飯が進むなあ!」
「まさに刺激的ってやつだ。俺っちはそんなに嫌いじゃないぜ」
「とりあえず食える」
「頭の天辺から汗がにじみ出る感じがたまらんな!これも修行のうちよ!」
 ひと匙のルーで皿に山盛りの白米を無造作にかき込む味音痴と辛党達は、騒動を尻目に平和な夕食を遂行している。
 世はまさに混沌。怯える者有り、怒るもの有り。けれどこの空間においてある種の超越者である審神者に対しては、面と向かって猛烈な不満を表せる者はいなかった。
 その瞬間までは。

「あーっ!もう限界だ!」
 苛立ちを顕にやおら抜刀して石切丸が立ち上がった。切っ先はまっすぐに審神者に向かっている。
「私は食べられない。このカレーとやらを無理に食べる必要も感じない。というより、これを皆が本当に完食したら、ここにいる全員の胃痛を治すために私は何日祈祷すればいいのやら!」
 抑えた口調とは裏腹に、表情は硬い。突如向けられた刃に、審神者一人が呆気にとられていた。
「俺の特製絶品カレーが食べられない?」
「食べられない!」
「なんで?」
余りにナチュラルに返ってきた疑問に、次は石切丸の方が呆気にとられる番だった。思わず切っ先も下がる。
「なんでって……辛すぎるからだよ」
「ええっ、これ辛すぎるの!?」
「まさか、今まで気づいてなかったのか!」
「気づいてなかっただと!?お前ちょっとは空気読めよ!オラオラオラ!!」
厨で一人、事態を阻止しようと孤独な戦いに身を投じていた大和守安定は、これまでにないほど本気でブチ切れていた。守勢が攻勢に転じ、鬼の形相で審神者に馬乗りになって襟首を締め上げる。
「首落として死ね!」
「ちょっ、待て待て!殺したらやばいだろ!」
「兼さん、そいつ本気で止めて!死ぬ気で!」
 さながら乱闘の様相を呈した食卓が落ち着くまでに、しばらくの時間を要したのは言うまでもない。

「ほんとーに、すいませんでした」
最終的に、全員の前で土下座で謝罪をさせられる羽目になった審神者である。抜き身を構えたままの大和守安定と石切丸が両脇に立っている。
「本気で謝れ。特に長谷部に」
「長谷部はあーんで沈んだんだからいいんじゃないの?」
「いいわけない」
取り付く島もない山姥切国広の一言に、しおしおと頭を垂らす。
「長谷部、ごめんな。あーんするならお前喜ぶかと思って」
「……主がそう思ってくれるなら、この長谷部、それ以上の喜びはありません」
 審神者に手を取られ、膝枕されたへし切り長谷部は、それだけ呟くと再び意識を失った。
「幸せそうな顔してるな」
「変態だ」
「長谷部くんとは気が合いそうだと思ってたけど、僕もちょっとここまでは理解できないよ」

 後に『カレーの変』もしくは『石切丸と安定ブチ切れ事件』と呼ばれた夜の話であった。
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手紙

 彼の手には、とうにくたくたになった手紙が握られていた。
 何度も何度も、書き手の声で脳裏に蘇るほど読み返した文だ。
 様々なものが電子化されても、手書きを愛して紙で手紙を書く人間は後を絶たない。この手紙の送り主もまた、そういう類の人間だった。

「あ、また手紙見てる」
大和守安定と加州清光が審神者に気づいて足を止めたのは、日当たりの良い本丸の縁側だった。彼らの主君は、よくここにいる。
「おっ、おかえり。お疲れ様。怪我とかしてないか」
「遠征ごときで怪我なんてしないよ」
「あー、でも腹減ったなー!今日の飯当番誰だっけ」
「今日の飯当番は、えーと、人増えたから複雑になったよな……っと、あ、お前らだわ」
「うわっ、マジそれ?これから米炊くのか」
 がっくりと肩を落とす加州清光に並んで、思わず大和守安定もため息をついた。
「何升炊けばいいんだっけ?なんだか、屯所を思い出すよ……」
「いや待て君達!今日は俺がメシを作って進ぜよう!お前らは米だけ炊くがよい!」
 やおら立ち上がった審神者に、おおっ!という声がふたり揃った。
「やった!俺お前の作る肉じゃがとか結構好きだよ」
「でも、どんな風の吹き回しで?」
 尋ねる大和守安定に、審神者は手紙を差し出した。
「これ見てたら、そういう気分になった」
「見ていいのかい?」
「いいぞ。別に極秘事項が書いてあるわけじゃないから」
 あっさりと渡された手紙を開くと、隣の加州清光も覗き込んでくる。文面に目をやると、意外にも短い言葉で綴られたものだった。

『元気にしてますか?ちゃんとご飯食べてる?
人参と長ネギが嫌いだからといって、わざと避けないように。
あと、下着は面倒がらずにちゃんと毎日替えなさい。

追伸、酒は飲んでも飲まれるな』

端的すぎる文面から、手紙の主がどういう存在なのかは二人にも簡単に想像がついた。
「……お母さんから?」
「いや、親戚の……まあ、姉さんみたいなもんだ。よく世話も焼かれた」
「へえ、そういや、沖田も時々手紙読んでたな」
「ああ、沖田総司も姉さんいたんだよな。なんていうかさ、料理が好きで、俺がたくさん食べると嬉しそうに見てた人だったよ。人に食べさせるのってそんなに嬉しいのかと、俺は子供心に思ったね」
「随分大事にいつも見てるから、どんなことが書いてあるのか気にはなってたよ。至言といえば至言だけど、ちょっと驚いたな。
 最近は手紙来ないの?」
 他意のない大和守安定の一言に、手紙を受け取る審神者の手が一瞬とまった。
「あー、うん。……もう、手紙来ないんだ。死んじゃったから」
「……ごめん」
「お前が謝ることじゃないよ。まさか死ぬような人だと俺も思ってなかったしな。
 それでー、なんか俺も久々に手料理をガッツリ振舞ってお前らの喜ぶ顔を見たいと、そういう心情に至ったわけで!以上、説明終わり!」
 わざと声のトーンを上げて、明るく振舞う審神者の様子は、逆に痛々しいものに見えた。そういえば、沖田も病に倒れてから殊更に明るく振舞うことがあったと、期せずして二人は同時に思い出していた。
「よーし、じゃあ俺張り切って米研いじゃうぜー!今晩何作る?」
「今晩は、カレーだ!」
「えっ、カレー!?」
「マジで?肉じゃがにしてよー」
「食べたい日それがカレー曜日!俺が本丸の法律です!よって今日はカレー」
 審神者は手紙をポケットにしまうと、加州清光と大和守安定の肩に手を回して歩き始めた。
 賑やかな声が縁側から遠ざかる。
 小鳥が一羽、一瞬首をかしげると、飛び立っていった。
 何かを見届けて、安心したかのように。

鬼を斬る者

「よお、山姥」
 本丸の縁側を山姥切国広が歩こうとしたところで、そう声をかけられた。
それで初めて、縁側に大の字に伸びた審神者に気づき、眉をひそめた。
「その呼び方、なんとかならないのか」
 控えめに、極控えめに文句を言ってみる。このどこかとらえどころのない主は、言っても聞いてくれない気はするが。
「じゃあなんだ、国広って呼ぶか?考えてみろお前、呼んだ途端に堀川と拙僧とお前が一斉に振り返るんだぞ。そもそも国広って刀匠の名前だろう」
「……山姥切と呼べばいいだろう」
「お前が写し写しって言うから、そう呼ばないでいるんだけどなあ」
 いよっと声を上げて、審神者が身を起こす。首を回したり、腕を回したりしている所を見ると、相当長い時間板間で寝ていたようだった。
「それで、俺に何の用だ」
「ああ、お前に次の隊長任すから、出陣してくれ」
「それだけか」
「あと、茶か何か持ってきてくれ。喉が渇いた」
 ふぅ、と思わず溜息が出る。何を言っているんだこいつは、と呆れるしかない。刀に何をさせるつもりだ。俺たちは都合のいい、命じられたことは何でもするような家来じゃない、と。
山姥切国広が嫌がっている空気を察したか、審神者は顔を上げて彼の顔を覗き込んできた。
「悪い。ちょっと疲れてたもんでさ。この場を維持するだけでも、結構霊力食うんだぜ。今日色々あったから、山姥切ちゃんにちょーっと甘えてみたくなっただけです。なんちってー」
「……気色悪い」
 眉をひそめてそう呟いては見たものの、山姥切国広はそれがあながち嘘ではないことに気づいていた。
 確かに彼は、珍しく憔悴しているようだった。こちらにそれと分からせるほどに。
 一番付き合いの長い身として、それくらいはわかるようになった。

縁側に並んで腰を下ろすと、審神者が手に何かを握り締めているのがわかった。紙の束。どうやら手紙らしい。
「お前、歴史改変論者どものことをどう思う?」
 突然そう話を振られて、咄嗟には言葉が出ない。そういえば、敵の何たるかについてあまり考えたことはない気がする。
 山姥切が答え倦ねているのを察して、審神者が言葉を絞り出した。
「あいつらのやることだけは、俺は絶対許さない。何が何でも止める」
珍しく語調が強い。微かな驚きを覚えて、山姥切は彼の主を振り向いた。妙に静かな目がそこにある。
「過去は変えていいもんじゃない。変えても現在や未来がよくなるとは俺は思ってない。所詮、この世なんていい事も悪いことも同じだけあるのさ。受け止める側の問題で増えたり減ったりするだけで。
誰かが死ぬ原因を消せば、他の誰かが代わりに死ぬ。そういうようにできてるんだろ、この世ってやつは。
苦しみ悲しみの原因を消しされば、幸せだけが残るのか?んな訳ねえよ。そんな都合のいい話はない!」
 一気に話し、審神者は体を折って咳き込んだ。思わずその背を支えると、しばらくして咳の治まった彼は、微笑んでみせた。
「ああ、やっぱりお前は綺麗だな」
 消え入りそうな声で、妙に澄んだ目で、山姥切を捉えて審神者はそう言った。綺麗と言われ、思わず顔を背ける。
「俺は、写しと言われる次に綺麗と言われるのが嫌いだ。知ってるだろう」
「知ってる。一番長く一緒にいるんだ。それくらいよく知ってるさ。
 俺もお前みたいにわかりやすく拗ねられればよかったよ」
「なんだそれは」
 審神者が微笑む。
 綺麗だ、とぼんやりと思う。この主こそ、綺麗と言われてもおかしくない。
「……最初にお前を選んだのは、俺に似てると思ったからかもな。
 写しのはずだったのに、そこに力が宿っちまったから、ずっと比較される。劣っていれば、却ってよかったのかもしれないのに。
 でも、俺は俺だ。俺は審神者だ。神意を読み取る者。降り宿りし神の何たるかを見極める者。宿りし神が邪なる者なら、それを払うのも俺の役目。
 もしも、お前らが怨念に飲み込まれて禍つ神になった時には、俺が始末をつけなきゃいけない」
 そこまで一気に告げると、審神者は目を伏せた。
「ただの刀なら良かったのにな。でも、現存しない奴もいるし、想いの欠片でも残っていれば、寄り代があれば宿らせることができる。戦うには、こうしなきゃいけないんだとわかってはいたんだけど、さ」
審神者の目に溜まり始めた涙に気づき、山姥切ははっと息を飲んだ。
「血肉を備えるのがどういうことかって、俺がちゃんとわかってなかったんだ。
 人の姿をして言葉を話したら、情を移すなって無理な話だろ。
 なあ、頼むから俺を鬼にしてくれるなよ。今生きてここにいるお前たちが、これ以上苦しむ様を見たくないんだ。
 俺が神殺しの鬼になって狂っちまったら……」
一度ぽっかりと空いた間に、ざわり、と嫌な予感が背を這っていったような気がした。

「お前が、俺を殺してくれ」

 両肩を、思わぬ力で掴まれる。今まで見たことのないほどの真摯な顔がそこにはあった。なんとか言葉を告げようとするが、うまくいかない。悩んだ挙句、山姥切国広は主の涙を指で拭ってやった。
 そうして、ようやく一言だけ告げる。
「……鬼には、させない」

 傍らに置いていた刀を持って歩き出す。出陣だ。
 全てを狂わす敵を、今は、ただ斬るのみ。


「うそつき」

SS第3弾。
アーリン殿下とメルヴィル君の出会い捏造の話です。

流れて消える

SSです。
メルヴィルの親友・ショーン君と、彼のお母さんが亡くなったときのお話です。
二代目アリアが心のそこから愛してたたった一人の人、マルヴィンさんの孫であるショーン君は、マルヴィンさんと生き写し。
そして、何故かアリアの危篤のときにきてました。下の記事参照。

SSは続きをどうぞ。

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相原やよい

Author:相原やよい
数年間放置してた別館を復活。SS置き場。

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